蝉退(せんたい)

「基源」
和名：スジアカクマゼミ・アブラゼミ/生薬名：蝉蛻（センダツ）
(1)セミ科のスジアカクマゼミの脱殻(裸蛹の全乾燥体)、そのほか昆虫の幼虫の脱殻、これは「金蝉衣」といわれたものである。学名：Cryptotympana atrata Fabricius.
(2)日本産は主としてセミ科のアブラゼミ（またはクマゼミなど）の脱殻である。蝉退は種類が多い。学名：Graptopsaltria nigrofuscata Motschusky.
「出典」 名医別録
「別名」 蝉殻（センカク）、蝉脱（センダツ）、蝉衣（センイ）、蝉退(センタイ)、浄蝉衣
「性味」 甘/寒
「帰経」 肺、肝

「成分」
キチン貭(chitin)を大量に含む。
「効能」
解熱、鎮静薬、風邪などの発熱、悪寒に解熱薬として用いられてきた。
ジンマシンなどの皮膚掻痒症に止め痒的効果があるとされる。
咽喉炎、結膜炎などの症状に消炎作用も報告されている。
中国では破傷風、慢性ジンマシン、化膿性中耳炎にも効果があるとのこと。
「薬理作用」
疏風熱、透疹、明目退翳、熄風止痙。
「応用」
一般に小児科領域で用いることが多く、内科・眼科でも用いる。
1.外感風熱および温病初期、発熱、頭痛、軽度の悪寒・咳嗽などの証に用いる。
肺熱による嗄声（急性咽喉炎・急性気管支炎）に、単純な外感風熱による嗄声に用いる。
菊花を配合し、散風熱、利頭目の作用を増強する。
胖大海、牛蒡子、桔梗などを配伍し、風熱による発熱、咽痛、声唖に用いる。
2.麻疹初期で、疹出が不十分なときに用いる。蝉退は透発と清熱の効能がある。
蝉退は宣発と清熱の効能があるので、葛根、牛蒡子などを配伍する。
風刺および風熱証による皮膚掻痒に白蒺藜、荊芥を配伍し、疏風止痒の効能がある。
3.小児の感冒による発熱、煩躁、睡眠時不安および小児の夜泣きに用いる。
4.肝経風熱における目赤、目翳(炎症性、外傷性の角膜損傷によって生じた雲状、斑状の角膜混濁と白斑)、多涙症に用いる。
菊花、木賊などを配伍する。例：蝉花散。
4.肝経風熱における小児の夜泣き、破傷風に用いる。（破傷風などの痙攣発作の鎮静に用いる。単独では効果が弱いので、他の鎮痙薬を配合する。）
単独であるいは全蝎、僵蚕、釣藤鈎などの鎮痙薬に配伍する。
5.最近、慢性腎炎のタンパク尿に対し試験的に用い、初歩的観察では一定の効果がみられた。
「用法・用量」
内服：煎剤には１日３～６グラム、あるいは丸・散剤に入れる。外用：適量、煎じ汁で洗う。
「産地」
中国の山東、河北、江蘇、湖北、山西省で、なかでも山東、河北省産は産量が多い。